消費税増税と総額表示

1.はじめに

平成26年以降、2度にわたる消費税率の段階的な引上げが予定されています。この2段階の引上げは、小売業者等の事業者にとっては、事務負担や経済的負担が増える可能性があります。なぜなら、これまで小売業者等は、総額表示が義務付けられていたからです。
総額表示とは、あらかじめ商品価格を表示するときは消費税を含めた価格を表示しなければならない、というもの。この総額表示を前提とすると、事業者は税率の引上げがあるごとに商品の値札を付替えたり、カタログ等を作成し直さなければならなくなり、事務負担や経済的負担を負わなければならないことになります。
そこで政府は、こうした事務負担に配慮して、従来義務付けられていた事業者に対する総額表示の特例として、一定期間総額表示を要しないという法律を制定しました。
なお、本内容は、平成25年8月20日現在、パブリックコメント手続きにより、関係各方面より意見公募中の内容です。

2.趣旨及び概要

「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(以下、本法といいます。)」では、消費税の適正な転嫁及び事業者による値札の貼替え等の事務負担に配慮する観点から、平成25年10月1日から平成29年3月31日までの間、総額表示義務の特例として、税込価格を表示することを要しないものとしています。
また、本法では、消費者の利便性にも配慮する観点から、本特例の適用を受けるための要件として「誤認防止措置」を講じることを求めています。
なお、平成29年3月31日までの間であっても、本特例を受ける事業者は、できるだけ速やかに税込価格を表示するよう努めなければなりません。

3.誤認防止措置

誤認防止措置とは、総額表示をしない場合において、消費者が商品等を選択する際に商品価格が税込でないことを明瞭に認識できるよう表示する方法をいいます。誤認防止措置の例としては、次のものが挙げられます。

【1】税抜き価格のみを表示する場合の誤認防止措置

(1)個々の等において税抜価格であることを明示する例
・○○○円(税抜価格) ・○○○円(本体価格) ・○○○円+消費税

(2)店内等における掲示等により一括して税抜価格であることを明示する例
・個々の値札等においては税抜価格のみを表示し、別途、店内の消費者が商品等を選択する際に目に付き易い場所に、明瞭に「当店の価格は税抜表示となっています。」といった掲示を行う
・チラシ、商品カタログ、ウェブページ等において、個別の商品価格には税抜価格のみを表示し、別途、消費者が商品を選択する際に目に付き易い場所に、明瞭に、「本チラシ(本カタログ、本ウェブページ等)の価格は全て税抜表示となっています。」といった表示を行う

【2】旧税率に基づく税込価格等で価格表示されている場合の誤認防止措置
消費税率引上げの前後においては、値札の貼替えが間に合わない等の事情により、新税率の適用後においても一時的に旧税率に基づく税込価格の表示が残る場合や、前もって値札の貼替えが行われることにより、新税率の適用前から新税率に基づく税込価格の表示が行われる場合も生じ得るところであり、これらの場合も本特例の対象となり得ます。
このような場合における誤認防止措置としては、以下のような表示が該当します。

(1)新税率の適用後においても一時的に旧税率に基づく税込価格の表示が残る場合
・個々の値札等においては旧税率に基づく税込価格を表示し、別途、店内の消費者の目に付き易い場所に、明瞭に、「旧税率(5%)に基づく税込価格を表示している商品については、レジにて改めて新税率(8%)に基づき精算させて頂きます。」といった掲示を行う

(2)新税率の用前から新税率に基づく税込価格の表示が行われる場合
・個々の値札等においては新税率に基づく税込価格を表示し、別途、店内の消費者の目に付き易い場所に、明瞭に、「既に新税率(8%)に基づく税込価格を表示している商品については、3月31日まではレジにて5%の税率により精算させていただきます。」といった掲示を行う

4.誤認防止措置とはいえない例

次のような場合には、誤認防止措置が講じられていることにはならないものとされています。

【1】誤認防止のための表示が商品等の代金決済を行う段階までされておらず、消費者が商品等を選択する際に、表示価格が税込価格でないことを認識できない場合
例)誤認防止のための表示が店内のレジ周辺だけで行われている

【2】誤認防止のための表示が、一般消費者にとって見づらいものであるなど明瞭になされていない場合

5.移行期間中の留意点

値札の張替え等を行う移行期間においては、店内の一部の商品について税抜価格のみの表示や旧税率に基づく税込価格の表示を行わざるを得ない場合があるかと思われます。この場合には、店内のどの商品の価格が税抜価格のみの表示や旧税率に基づく税込価格の表示であるかを明らかにする必要があります。
その方法としては、次のようなものが考えられます。

【1】個々の値札において税抜き価格である旨や税込価格の計算に当たって用いた税率を明示する方法
【2】値札の色によって区分する方法
【3】商品棚に税抜き価格である旨や税込価格の計算に当たって用いた税率を明示する方法

関連記事

  1. 日本取引所グループが記者会見で新指数の骨子の内容を説明

  2. 銀行からコベナンツ条項付きの提案を受けたらどうするべきか。

  3. 診療情報提供書に係る診療情報提供料の自己負担額の医療費控除の取扱いにつ…

  4. 消費税増税が閣議決定

  5. 経済産業省より生産性向上設備投資促進税制が公表されました

  6. 今後の新地方公会計の推進に関する実務研究会の資料が公表されました。