平成27年1月1日以後、直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例が創設されます(新措法70の2の4、平成25年税制改正法附則1五ハ)。暦年課税の場合には、父母や祖父母からの贈与により財産を取得した20歳以上の受益者について、特別税率の適用がある「特例贈与財産」と、特例税率の適用がない「一般財産」に区分した税率を適用して贈与税を求めることになります。
1.直系尊属から贈与を受けた場合の税率の特例
改正前(現行)の贈与税の税率については、10%~50%の6段階に分かれた税率構造により課税されており(相法21の7)、基礎控除額は一律110万円となっています。例えば、贈与により500万円の財産を取得した場合の贈与税額については以下の通りとなります。
【改正前】500万円-110万円=390万円(基礎控除後の課税価格)
390万円×20%-25万円=53万円(贈与税額)
改正後(平成27年1月1日以後)は、25年度改正で創設された直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例により、直系尊属から贈与により財産を取得した20歳以上(その年1月1日時点)の受贈者については、相続税法に定める一般税率でなく、10%~55%の8段階に緩和された特例税率を適用して贈与税額を算出します。基礎控除後の価格が4,500万円超の場合は最高税率が55%へ引き上げられますが、基礎控除後の課税価格が3,000万円以下の場合には税率が緩和されます(新措法70の2の4)。例えば、直系尊属から贈与により500万円の財産を取得した場合の贈与税額について、以下の通りとなります。
【改正後】500万円-110万円=390万円(基礎控除後の課税価格)
390万円×15%-10万円=48万5,000円(贈与税額)
一方、一般贈与財産の場合には一般税率を適用します。相続税法に規定する一般税率は10%~55%の8段階に改正され(新相法21の7)、基礎控除後の課税価格が1,000万円超~1,500万円以下は45%に引き下げられますが、基礎控除後の課税価格3,000万円超の場合は55%に引き上げられます。
2.特例贈与財産と一般贈与財産がある場合
特例贈与財産と一般贈与財産がある場合の贈与税の計算が必要となるケースがあります。例えば、暦年課税の場合、特例贈与財産の受贈者が同一年中に一般贈与財産を取得した場合の算式は以下の通りです(新措法70の2の4、新措通70の2の4-2)
【算式】
ⅰ)一般贈与財産
基礎控除後の課税価格×一般贈与財産の税率×(一般贈与財産の価額÷合計贈与価額)
ⅱ)特例贈与財産
基礎控除後の課税価格×特例贈与財産の税率×(特例贈与財産の価額÷合計贈与価額)
ⅲ)贈与税額=ⅰ+ⅱ
※合計贈与価額=一般贈与財産の価額+特例贈与財産の価額
※基礎控除後の課税価格=(一般贈与財産の価額+特例贈与財産の価額)-基礎控除額
例えば、贈与により叔父から一般贈与財産200万円、父親から特例贈与財産300万円を取得した場合には、合計贈与価額が500万円となり、基礎控除後の課税価格は390万円(500万円-110万円)となる。上記算式により、
ⅰ)(390万円×20%-25万円)×(200万円÷500万円)=21万2,000円
ⅱ)(390万円×15%-10万円)×(300万円÷500万円)=29万1,000円
ⅲ)贈与税額=ⅰ+ⅱ=50万3,000円